日経225の売買で、過去のデータを一切参照することなく 売り or 買いを毎日ランダムに行うとします。
このランダムエントリーで長期的に利益が残せるか、というのが今回のテーマです。
結論から言うと、エグジットルール次第で利益を残しやすいシステムを作るのは可能だと思われます。しかし実売買ではコスト負けします。
検証結果から導いた結論でなぜそうなるのかについてはいくつかの仮説が出てきます。それは最後に触れるとして、まずはシミュレーションの具体的な内容を書いていきましょう。
1)毎日9:30にランダムにエントリーを行う
直前の動きなど一切関係なく、コイン投げによって、その日が買いか売りかを決めるとします。
時刻にあまり意味はありませんが、エントリー時刻は9:30としました。
2)エグジットは損小利大のルールで行う
エグジットでは損は小さく、利益は大きくなるようにします。目標とする利益の大きさは固定せずにいわゆるトレーリングストップ方式とします。損切りは、ボラティリティによって変化させますが、利益に比べて損失が小さくなるようにします。シミュレーションでは、当サイトで使っているシステムのエグジットロジックを一部変更して用いました。
3)シミュレーション条件
期間: 2007/1/1~2009/12/24 5分足
売買回数: 730回 (1日1回売買のデイトレード、夕場への持ち越しあり)
試行回数: 200回 x 2
約3年間の5分足のチャートで、730回のランダムなエントリーが発生します。この試行を200回繰り返します<試行A>。
さらに、エントリーの売りと買いを、全く逆にして、同じ乱数で200回繰り返します<試行B>。
【結果】
<試行A>
総損益:最大7955 平均2408.4 最小-2645
勝率:最大45.34% 平均41.42% 最小37.17%
平均損益比: 最大1.77 平均1.49 最小1.36
P/F:最大1.41 平均1.12 最小0.88
総損益プラスvs総損益マイナス: 172回 vs 28回 (200回試行)
<試行B>
総損益:最大7685 平均2649.4 最小-2930
勝率:最大46.03% 平均41.67% 最小37.67%
平均損益比: 最大1.73 平均1.49 最小1.23
P/F:最大1.38 平均1.13 最小0.87
総損益プラスvs総損益マイナス: 171回 vs 28回 1引分 (200回試行)
【考察】
乱数に偏りがあって勝ち or 負けのどちらかが多くなっているとすれば、試行Aと試行Bの結果が異なるはず(同じ擬似乱数で売買が逆の試行なので)ですが、ほぼ同じ。
勝率40%程度は、損小利大のトレンドフォロー戦略の典型例といえそう。平均損益比が大きい(平均:約1.49)ので結果として200回の試行では利益が出ています(総損益平均2400~2600円)。総損益はプラスになる回数のほうが多くなりました(総損益がプラスになる率=約86%)。
ランダムなエントリーだったとしても、エグジットルール次第で利益を残しやすいトレードを行うことが可能と言えるでしょう。
この理由については、相場をランダムウォークと仮定した時よりも、実際の値動きはトレンドが大きくなる(継続しやすい)傾向があるからだと考えます。つまりコイン投げでエントリーしていても、いずれトレンドに乗れるならば、その時に得られる利益のほうが、早めの損切りで蓄積される損失よりも大きいから利益が残しやすいということです(それでも負けになることもあるわけで、トレンドの発生した方向とエントリーの方向が合わなかった頻度が多かった時。しかしトータルで見れば期待値は高い)。
ところで、実際に売買コスト(手数料・スリッページ)を加味すれば、どうでしょうか。
スリッページ往復5円なら、730回 x 5円 = 3650円 がマイナスであり、手数料も加われば、平均総損益(2400~2600円)を上回るため、分が悪く、負けることのほうが多くなります。
コイン投げのエントリーだけでは、実売買では勝てないということになります。ではどうすればいいのかというと、支配的要因であるエントリーの精度を高めるという、当たり前の話になります。
物の本によれば、ランダムエントリーでもエグジット次第で100%の勝ちになるようなことが書いてあったのですが、本当かなと思ったところからこの検証をしてみました。予想よりも高く(86%)と、結果にちょっと驚きましたが、100%ではないのでむしろ自然な気がします。
トレンド発生時のトレードという観点から言えば、エントリーとエグジットは独立したものではないので、エントリーだけランダムにしてこのようなシミュレーションしても、実は評価は難しいところがあります。さらにエントリー時刻が一定、1日1回という今回のテスト方法も結果に歪みを与えているかもしれません。
他にもいくつか条件を変えてテストしたことがあるので、機会があればまた記事にしてみようと思います。
いずれにしても、今のシステムトレードのエグジットルールがそれなりにうまく機能してそうだということを、数値で把握することができたと思っています。